会社のトイレ(個室)がいつも満室になるのはなぜ?

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いつも会社でトイレの個室が埋まっていて入りたいときは入れない!長時間待たされる!という経験をしている方はとても多いのではないでしょうか?

私も、オフィスビルの5Fフロアのトイレが全部埋まっているため、4Fに行き、ここも埋まっているため3Fに行き・・・と、結局1Fのトイレまで行ってしまったことがあります。結局トイレに行くだけで20分以上かかってしまいました。

別の会社でも、朝からトイレを待っているだけで、勤務時間が終わってしまったという冗談のような話を聞きます。

このように過酷な会社のトイレ事情はなぜ生まれているのでしょうか。長年トイレリフォームに関わってきた経験を生かして解説してみたいと思います。

まず大まかに言うと以下の2点が問題点です。

  1. トイレの絶対数が少ない(女子トイレが分けられてないなど)
  2. トイレに長時間こもる人がいる

この問題点をより深く見ていくと、会社の過酷なトイレ事情を生んでいる原因が見えてきます。

トイレの数自体が足りないのは法律違反の可能性あり

まずトイレの絶対数が少ないのはそれ自体が問題で、法律に触れます。

「労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則」、および「事務所衛生基準規則」には、従業員数に応じたトイレの設置数が定められています。

第17条 事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
一. 男性用と女性用で区別すること
二. 男性用の大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること
三. 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること
四. 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること  他

このトイレの設置基準に違反している場合は、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」と、かなり重い罰則が事業者に規定されています。

トイレがいつも満室になっている場合、この点をまずチェックする必要があります。

男子トイレと女子トイレは分けなくてはいけない

そして、意外と見落としがちなのは、事業所・事務所のトイレを『男性用と女性用に区別すること』ということが定められていることです。

小規模な会社や事業所の場合、この条文を知らない、見落としてたことで、未だに男女兼用のトイレとしていることがあります。

共用のトイレを男女で使っている場合、どうしても女性の方が使用時間が長いことから、いつも埋まっているという状況を招きかねません。

更に、男女共有トイレということだけで、女性の離職率を高めかねないのも問題です。

女性が職場にいる間に、トイレに行く回数は、平均して3~4回です。その中には、体調悪くお腹の調子が悪い日も、女性特有の月に1度の生理もあります。

そんな日に、トイレで男性と鉢合わせしてしまったら最悪ということです。トイレに行くのも様子を見計らったり、水分を取らずにいたり、トイレに行くことを我慢したりする女性までいるそうです。

そして、どうしてもトイレに行きたくなったら、男女共有トイレに行くよりも、会社を飛び出して歩いて数分のコンビニンビニに向かうなどする女性もいるそうですから、モチベーションの維持・向上などへったくれもありません。

待ち時間を少なくするために必要なトイレの数は?

しかし、法律の定めはあくまで最低限度のトイレの数を規定するに過ぎません。法律の定め以下のトイレしかないのは大問題ですが、法律通りにトイレの数を用意したとしても、トイレがいつも満室だという状況が改善するとは限らないのです。

例えば、法律の通りに女性従業員が100名いる職場で、トイレの個室の数が5個だとしましょう。そして、それぞれが2時間ごとに1回5分トイレに行くものとして、待ち行列理論という数理モデルを使って計算してみます。

すると、トイレの待ち時間は5人分となる25分となります。かなり待たされてしまうことが分かります。

しかし、1回の利用時間が6分以上となるとこの数理モデルではもはや計算不能となります。何故かと言うと、トイレを利用する人の数が多すぎて、待つ人の数が増え続け、待ち時間も増え続けてしまうからです。現実的にも、トイレはパンクしている状態になります

これを防ぐためには、例えば、トイレの個室の数を6個に増やす必要があります。こうすれば、30分の待ち時間で済むことになります。

では、利用時間が6分のままトイレの個室を10個にしたらどうでしょうか。こうすると、待ち時間は1人分で6分で済むことになります。

このように、現実的には法律の定めよりもずっと多くのトイレが必要になることが分かります。

また、トイレの利用時間がやはり大きな要因であることも分かります。以下では、トイレの利用時間について、述べたいと思います。

トイレに長時間こもる人は何をやっているのか?

会社のトイレがいつも満室である理由の一つにトイレでの籠城があります。実際に、トイレで何十分も開かない個室がある、など会社のトイレでの立てこもりが問題になることがしばしばあります。

「マイナビウーマン」の22歳~34歳の働く女性に対して行った「Q.あなたが毎日、職場のトイレにいる時間の合計に近いのを選んでください」というWebアンケートによると、

順位 トイレにいる時間 全体に占める割合
第1位 10分 39.9%
第2位 15分 21.5%
第3位 20分 16.6%
第4位 30分 9.8%
第5位 25分 3.1%
以下省略  

となったそうです。

これを見ると、実に7割以上の女性が、10分~20分間トイレを利用していることになります。このうち個室を利用している時間は不明瞭ですが、30分も1割近くいますから、それなりに長い時間利用されていると考えられます。

では、何をやっているのかというと、女性誌「CANCAN」でのアンケート(複数回答可)結果では、以下のようになったそうです。

順位 トイレですること 全体に占める割合
1位 スマホチェック 53.3%
2位 ぼんやりする 40.0%
3位 ストレッチ 37.8%
4位 深呼吸 35.6%
5位 寝る(仮眠) 26.7%
6位 好きなものの写真などを見る 24.4%
7位 泣く 14.4%
8位 ツボ押し 13.3%

ダントツトップは「スマホチェック」、SNSやツイッター(現:X)の確認をして、現実の仕事から一旦離れて、気分転換する人が多いようです。

この他にも、「歯磨きをする」「同僚・後輩にグチる」「メイク直し」「鏡で自分の表情を確認する」などがありました。

このように、トイレにこもる人は、仕事場から一旦離れてリフレッシュしていると考えられます。

TOTOの2018年調査(回答者数は1041)によると、「トイレで『気分を切り替えたい』と感じることがありますか?」という質問に対して、よくある22%、まあある32%と、実に半数以上の人がトイレを気分転換の場所にしていることが分かります

この調査からも、トイレにこもる人は気分転換を求めている可能性が示唆されます。上記は、女性へのアンケートを主に引用していますが、男性の場合もほぼ状況は変わらないと考えられます。むしろ、男子トイレでの籠城は女性より長いこともあり、男性の相当数が気分転換でトイレに逃げ込んでいる可能性があります。

ではなぜトイレで気分転換をする必要があるのでしょうか?

それは、自分のパーソナル・スペースが会社内にない、一人で気分転換をする場所がないというのが理由にあると考えられます。

別の記事で、給湯室がリラックスの場となっていると書きましたが、喫煙者のための喫煙室はあるのに、非喫煙者が休憩する場所がないという会社さんも非常に多いようです。

従業員がトイレにこもらないようにするためには

従って、従業員がトイレにこもらないようにするためには、休憩スペースを作るということが一つに挙げられます。これは、従業員の気分転換やモチベーションの維持を考えた時には、至極真っ当な対策となります。

繰り返しになりますが、喫煙者のための喫煙室はあるのに、非喫煙者のための休憩スペースがないというのは、バランスを欠いています。特に、女性の喫煙者は少ないため、どうしてもリラックス場所を給湯室やトイレに求めてしまいがちです。

トイレをこもる人を減らそうと考えた場合、このような対策を行ってみてはいかがでしょうか。とは言え、それでも、人によっては完全に一人になりたいという人もいるでしょうから、完全にトイレにこもる人を排除するのは難しいかもしれません。ですから、トイレがいつも満席という状況を解決するためには、トイレの増設も同様に考える必要が出てきます。

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