新型コロナ肺炎の影響で緊急事態宣言が出され、働き方も大きく変化しました。
緊急事態宣言が解除されてもなお終息したとは言えず、働き方を完全に以前の形に戻すことはできない状態です。
働き方の多様性や変化が求められる今、企業もそれに合わせた仕組み作りや、オフィス内における対策に追われています。
やはり第一に考えるべきは従業員が安全に、安心して働けることです。コロナによる犠牲はあってはなりませんし、感染にビクビクするような状況では生産性が上がりません。
そして、第二には会社からコロナの患者を出すことで起こり得る風評被害のリスクを回避するということです。現代のようなSNS社会ではファクトチェックがおざなりなまま風評被害が一気に拡散されることもあり得ます。ですから極力オフィスがクラスターとならないようにする必要があるでしょう。
それでは、コロナ対策が出来ているオフィスとはどのようなオフィスでしょうか。
ここでは、厚生労働省や経団連が推奨している対策を参考にしながら、オフィスのコロナ対策についてまとめてみます。
既に当たり前のように実施されていることも含まれると思いますが、非常に重要なことですので、参考にしていただければ幸いです。
まずは3密の回避
新型コロナウイルスの感染を防ぐために重要なことはまず、いわゆる「3密」の回避です。
密集、密接、密閉の3密のうち、オフィスで発生しやすい密は密集と密閉であると考えられます。
具体的にどのような場面がそれに当てはまるでしょうか。
例えば会議室で複数名で会議をする場合はどうでしょうか。
部屋にもよりますが、決して広いとは言えない部屋で数人が集まって話し合いをすれば、密集・密閉空間は簡単に作られます。
また、オフィスそのものが狭く、座席と座席の間隔もあまりとれないという環境の場合もリスクは大きくなるでしょう。
また、座席をフリーアドレス(好きな座席を選ぶことができる環境)にしているオフィスの場合、一つの座席に不特定多数の社員が触れることになるため、感染リスクを高める可能性があります。
ざっと思いつくだけ例を挙げてもこれだけありますが、このほかにもお手洗いや休憩室などの共有施設、オフィス内の換気や座席の配置など様々な注意点があるでしょう。
では、これらのリスクを減らすためには、具体的にどのような対策が効果的なのでしょうか。
オフィスで取り入れるべきコロナ対策
ここからは、政府や経団連が推奨していたり、実際にオフィスで取り入れられている対策法をご紹介します。
厚生労働省のホームページに掲載されている、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を基本にまとめてみます。
テレワークやローテーション勤務を推奨
これまで通り出社をするということは、多くの社員が公共交通機関を利用して通勤しなければなりません。
緊急事態宣言解除後のJR東日本の埼京線における電車の混雑具合をみてみると、平日の朝7:00〜9:29の間は「肩がふれあう程度」となっています。
一方、厚生労働省が保つべき距離(ソーシャルディスタンス)として推奨しているのは2m、最低でも1mです。
つまり、現状の朝の通勤電車では必要なソーシャルディスタンスが取れておらず、感染リスクがあると言えます。7/9現在、感染者数が増えるとともに市中感染が増えているとも言われており、極力ソーシャルディスタンスを維持したいにも関わらずです。
従って、感染のリスクを減らすためには、政府なども推奨しているテレワークやローテーション勤務を導入することが重要と言えます。
出社人数自体を減らすことが出来れば、オフィス内の密集も回避できます。
ただし言うまでもありませんがテレワークを実施する場合、労働時間を適切に把握できるような仕組み整備も同時に行うことが必要ですので、それなりの投資が必要となります。
この点、東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)」による助成金や全国での「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別型)」による補助金も検討したいところです。
こまめな換気
オフィスの窓を開けられる環境の場合、1時間に2回以上は窓を開けて換気をしましょう。
夏場は暑さが厳しいので、エアコンも併用して室温を調整しながら換気をします。
なお、基本的にエアコンは換気機能はないため、エアコンがついていれば空気が循環するというわけではありません。
オフィスにエアコンだけではなく換気設備がついている場合に限り、窓を開放しての換気は必要ありません。
効きの悪い換気扇を交換する
換気扇は長年の利用により機能低下が発生している可能性があります。
最近ではパナソニックの熱交換気ユニットなどのように、オフィス用の高機能な換気ユニットが出てきており、こういったものと交換することも一つの選択肢となります。
また、上記では1時間2回と書きましたが、実は非常に換気能力が高いパチンコホールでは、1時間に6回程度換気が行われているとのことです。
換気の悪いカラオケ店ではクラスターが発生しましたが、パチンコホールでクラスターが発生したケースは今のところ確認されていないことから、このような高機能な換気設備を導入することでコロナ対策となると言えるでしょう。
マスクの着用と手指の消毒
社内での飛沫感染を防ぐために、社員へのマスク着用を促しましょう。
また、新型コロナウイルスの感染防止には手洗いが有効です。
始業前、食事などの休憩後には手洗いやアルコール消毒をするよう指示すべきです。
それにあたり、水道設備の整備、石鹸、アルコール消毒液の用意、設置をする必要があります。
直近では無症状の感染者も増加傾向にあります。知らぬ間に他の社員に移してしまうことを防ぐためにも、マスクの着用と消毒は徹底させましょう。
オンライン会議
先ほども書いた通り、社内の会議室での会議は密集、密閉空間となるため極力避けるべきです。
そこで多くの企業が取り入れているのがオンラインシステムを使ったテレビ会議です。
オンライン会議であれば、出社している社員もテレワークをしている社員も関係なく会議をすることができます。
やむを得ず対面で会議をする場合は、マスク着用の上、会議室ではなく換気のいいオープンエリアを使用しましょう。
オフィスのレイアウト変更
感染防止の基本の一つに、身体的距離の確保というものがあります。
人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空け、会話をする場合は真正面を避けるべきなのですが、現在のオフィスでこの間隔はとれているでしょうか。
おそらく多くのオフィスが、従来のレイアウトではこの間隔を取れていないでしょう。
もしある程度オフィスの空間に余裕があるのであれば、レイアウト変更をお勧めします。
具体的には、
- 座席の両隣を一人分空ける
- 正面の席は空けるor全員が同じ方向を向く座席にする
- 島型レイアウトの場合、上長が座るケースが多い端の席は作らない
これらを取り入れると、座席をこれまでの半分程度しか確保できなくなります。
テレワークやローテーション勤務をうまく取り入れて対応することが必要です。
パーテーションの活用
やむを得ず対面で座席を取る場合や、オフィスに十分な広さがなく身体的距離を確保できない場合は、飛沫感染防止の対策をします。
コンビニや店舗のレジなどで目にすることの多いビニールカーテンを想像してもらうとわかりやすいかと思います。
アクリル板やデスク上パネルなど、十分な高さがあるものを選んで設置します。
また、個人で座席を区切り、間にパーテーションを設置するという方法もあります。
壁を抗菌仕様に塗装する
日本ペイント株式会社が開発した新しい抗菌・抗ウイルス塗料「パーフェクトインテリア エアークリーン」が脚光を浴びています。
この塗料は、従来製品よりも低臭気であることに加え、可視光応答形光触媒による抗菌性・抗ウイルス性を備えていることが大きな特徴です。
プラスティックやステンレスの表面に付着したコロナウイルスは最長で2〜3日生存すると言われておりますが、この塗料を塗った壁の可視光応答形光触媒作用によってウイルスの繁殖が抑制されると言われています。
現状ではコロナウイルスを減少させるとの結果は明らかになっていませんが、従来の塗料とウイルス感染価を比較した実験では、99%ウイルス感染価が減少したとの結果が出ていることから、一定の効果が期待できそうです。
シーラーの下塗りが必要であることから、お値段としては工賃も含めて通常の塗装の1.5倍程度になる可能性がありますが、既に内装リフォームをお考えであれば、非常に有力な選択肢となるのではないでしょうか。
コロナ流行終息後を見据えたオフィスの見直しを
今後も感染リスクとは常に隣り合わせの期間が続くと思われますが、ワクチンが開発されるまでには2年ほどかかると言われています。
また、従前からの人手不足は社会構造上の問題として続いていきます。これに対してはいわゆる”働き方改革”で対応していく必要があります。
テレワークで生産性の低さが視える化されるとも言われており、仮にコロナが収束したとしても、テレワークや対面ではない営業活動など生産性をアップさせる取り組みは取り入れていく必要があるのではないでしょうか。
また、高い賃料を払ってオフィスを借りる必要はないという判断をする企業も中に出てきています。筆者が知っている企業の中には早速引っ越しをした会社も出てきています。
テレワークを快適にするために必要なシステム、安全で快適なオフィス環境を作るために役立つ換気システムなどには投資し、一方で机や椅子などは移動が可能で、レイアウトを自由にしやすいものを選ぶということも必要になってくるかもしれません。なお、このような机や椅子は従来の島型レイアウトのデスクなどよりも比較的安価なものが多いようです。
感染流行の今この瞬間の対策だけではなく、これを機にその先を考え、新しい働き方、新しいオフィスの形を作っていきましょう。