今年の夏も暑いですね。tenki.jpによると今年の夏の気温は全国的に平年並みか高い予想のようです。
更に、気象庁によると2020年時点で日本の平均気温は1898年の統計開始以降最も高く、気温が上がる傾向にあることは間違いないようです。
これ以上暑くなるのか・・・とげんなりしてしまいますが、事業者として最も気になることは、暑さで従業員の仕事の効率が落ちるか否かということだと思います。
ノルド社会環境研究所が2013年に行った「夏の職場の節電実態と本音調査」によると、工場や倉庫勤務者は95.0%が暑いと実感しているとのこと。
更に、暑さによって平均で39.1%仕事の能率がダウンするという衝撃の結果となっています。
つまり、夏は暑さによって通常の6割しかパフォーマンスが出せないということになります。これでは、いくら業務効率化をしたり、経費削減を行っても殆ど意味がなくなってしまいます。
では、冷房をガンガン付ければ良いのか?というと昨今電気代が大幅に値上げされていますから、ただでさえ収益を大幅に圧迫する状況なのにも関わらず、更に経費を増やすことになってしまい、とても現実的ではないと言えます。
従って、多くの会社では、
- 経費節減のために冷房の設定温度を制限せざるを得ず、従業員から「暑い」と不満が出てしまう。
- 暑さのために、従業員の業務効率を下げている。
という問題を抱えざるを得ない状況と言えます。また、
- 冷房の設定温度を下げているが、「それでも暑い」という不満の声が出てしまう。
- 結果として、光熱費も高くなっている。
という会社もあるようです。
そこでこの記事では、このような事業者様に向けて、冷房を最低限しか使わずに工場やオフィスの中を涼しくする方法を検証していきたいと思います。
目次
屋根や外壁が太陽光で加熱されて室温が上昇する
まず、そもそも室内の温度を上昇させる原因は何か?ですが、結論から言うと、夏は特に太陽光による建物の表面温度上昇が大きな原因です。
勿論、人が沢山集まることによる気温上昇もありますが、冷房の入っていない部屋に入った時に”ムワッ”と感じる夏場の暑さは、正に太陽光によるものと言えるでしょう。
以下の写真では屋根の表面温度が59.6℃にまで上昇しており、太陽光の強さが実に良く分かります。
このように、屋根の表面温度が上昇することで、室内に熱が伝わり室内温度を上昇させます。これは、車をイメージすると分かりやすいと思われます。
断熱材が殆ど入っていない車の場合、車の表面温度が上昇するとダイレクトに室内の温度を上昇させます。夏の車内は非常に危険と言われていますが、50℃前後にまで上昇することになります。
ビルや工場についても同様で、太陽光が屋根や外壁の表面温度を上昇させ、室内温度を上昇させています。屋根の遮熱の有無によって室温2~3℃変化するという調査結果もあり、太陽光による室内温度への影響は非常に大きいと推測されます。
夏の暑さを防ぐためには遮熱塗装が有効
近年、ヒートアイランド現象を防ぐためにはどうしたらよいのか?という観点で様々な検証が行われており、屋根や外壁の「遮熱塗装」が注目されています。
遮熱塗料とは正確には「高反射率塗料」と言われており、その名称の通り、太陽光を反射することで表面温度を上げないようにするというものです。
簡単に言うと、塗料によって建物をカガミのような状態にするということです。
弊社では、協力会社であるブルーアート社の協力を得て、塗料の性能を検証しました。
遮熱塗料比較実験
屋根の塗装に使われる以下の主要な塗料で比較を行ってみました。
- ルーフペイント <関西ペイント> 合成樹脂系塗料
- クールタイト <SK化研> ポリウレタン樹脂遮熱塗料
- ガイナ <日進産業> 特殊セラミック断熱水系塗料
鉄板に指定の下塗り(錆止め塗料)を均等に同じ塗布量にて塗装後、中塗り・上塗りを2回塗りし、日が当たる場所に鉄板を2時間程度放置しました。
最も気温が上がる12時頃に温度を測りました。その結果・・・
ルーフペイント
鉄板の温度は47.1度となりました。
クールタイト
鉄板の温度は40.6度となりました。
ガイナ
鉄板の温度は、36.3度と最も低くなりました。
遮熱塗料比較実験の結論
結論としては以下のようになります。
- 塗料によって遮熱効果は異なる。
- 適切な塗料を使用することで、遮熱が可能となる。
- 屋根に遮熱塗料を塗ることにより室内の温度上昇を防ぐ可能性がある。
また、遮熱をした場合、冬は寒くなると思われがちですが、そもそもの太陽光が弱いため、影響はそれほど強くありません。寒さを防ぐためには適切に断熱を行う方がより重要となります。
散水装置による屋根の冷却も効果がある
更に、散水装置による「打ち水効果」を利用して、屋根や外壁の表面温度を劇的に下げる方法もあります。
実際に、以下の事例では散水装置を活用して工場の屋根を冷やしています。
雨水を利用してこの散水装置の冷却性能を検証したのが以下となります。
検証環境
検証は、川口市の弊社社屋にて行いました。天気は正に真夏日であり、気温は既に37.3℃。正に耐え難い暑さです。
検証を行う屋根の状況です。太陽光パネルを敷き詰めています。
太陽光により屋根は60℃近くに
様々な場所で温度を計測しましたが、屋根の表面温度は軒並み50度以上となっていました。
サーモグラフィーでは、屋根一面黄色くなっており、非常に温度が高い状況であることが分かります。
散水装置で雨水を30分程度散水
屋根の表面温度を測った後、散水装置を使って30分程度散水しました。
水が十分に届いた場所は30℃台に低下
今回は散水にムラがありました。水が十分に届いた場所については、30℃台後半まで温度が下がりました。一方、やや水が届きにくかった部分については、約10℃の低下は見られましたが、40℃後半にとどまりました。
以下は、サーモグラフィーを利用して屋根の温度を調べた画像です。
散水装置による屋根の冷却の結論
上記のように、散水装置による屋根の高い冷却効果がみられました。
水の使用量は5分で1Lとなり、1時間では12Lとなりました。
1日6時間利用すると72L利用することになります。従って、雨水をタンクに溜めて利用する方法がおススメです。なお、タンクの大きさは色々ありますが、弊社では250Lのタンクを3つ利用しています。
遮熱塗料や散水装置利用はSDGs則った活動です
遮熱塗料や散水による冷却は、冷房と比べてSDGsに合致した活動となります。
SDGsとは、
SDGsは、パートナーシップと実用主義の精神に基づき、いま正しい選択をすることで、将来の世代の暮らしを持続可能な形で改善することを目指します。
というもので、17の目標が定められています。
この13番目の目標には、「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」というものがあり、電気を極力使わずに、夏の暑さを和らげるという側面から、遮熱塗装や散水装置利用はこの目標に合致したものであると考えられます。
事業者様にとっても、エアコン代という大きな経費を大きく削減できるだけではなく、SDGsに則った活動をしていることをアピールすることもでき正に一石二鳥の取り組みとなります。
ソーラーパネルを設置することで、屋根を遮熱し光熱費も削減する
天然ガス(LNG)と石炭価格の高騰、原発停止、円安などによる電気代の高騰により、自家消費型太陽光発電が注目を浴びています。これはその名の通り、太陽光によって自家発電し、自社の電気の一部を賄おうという考えです。
設備投資の資金は必要となりますが、定常的な光熱費削減には直接的に効果がある方法で、今まで通りエアコンで工場内を冷やすこともできますので、非常に有効な方法であると言えます。更に、別の大きなメリットもあります。それは太陽光パネルの日射遮蔽効果です。
以下は、環境省が公表している「天井に断熱材を入れていない倉庫の屋根に太陽光パネルを設置し、外気温と、室内の天井面の温度を測定したデータ」ですが、13時に、外気温が36.4℃、パネル無の屋根面が56.5℃でパネル下が47.1℃となっており、太陽光パネルの日射遮蔽効果が10℃近くあることが分かります。
屋根の温度が60℃になると、室温にして2~3℃上昇につながると言われていますので(二階建て家屋の二階や、マンションの最上階における室温の高さを考えると理解できるところだと思われます)、室温を考えると太陽光パネルの日射遮蔽効果は非常に優れていると言えるでしょう。
また、上記のデータは無断熱であることが前提です。屋根が断熱されている場合、パネル下の温度は35.5℃と無断熱よりも10℃以上低く、外気温を下回るレベルまで下がることが分かっており、断熱と太陽光パネルを組み合わせることで、非常に高い遮熱効果が見込めます。
太陽光発電で電気を発電することができることを併せると、メリットは非常に大きいと言えます。
ドローンにて安全・安心・正確に現況確認を行います
以下の写真は、ドローンで空中から弊社の社屋を撮影したものです。
ドローンの講習を修了し、国土交通省に機体登録、パイロット登録を届け出て、ようやく運用できる運びとなりました。
ドローン導入によるメリットとしては、屋根に上らなくて済むことで作業者の安全が確保できる、現況確認に必要な時間が短縮できるなど様々な点が挙げられます。
また、上空から撮影できるため漏らすことなく現況を確認できることもメリットとして挙げられます。勿論、一定の距離で近づくことも可能ですので、酷暑においても、作業者に負担をかけずに細かく正確な状況確認ができます。
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