以前はスペース活用の面でもメジャーだった機械式駐車場ですが、近年維持が難しくなり撤去するマンションが増加しています。
この記事では、機械式駐車場を撤去する費用相場、工事法その前提として機械式駐車場を維持管理するにあたっての問題点、などについてご紹介します。
機械式駐車場撤去の費用相場
マンションの機械式駐車場は規模によって少々異なりますが、多くが「二段方式」、「多段方式」と呼ばれるタイプです。
個人宅で地上二段の機械式駐車場を設置しているケースもありますが、マンションの場合は下段がピットという地下の穴に収まっています。
下段の他の住人の車を移動させずに上段の車の出し入れができるため、これまでマンションで多く採用されてきました。
では、この二段方式・多段方式の駐車場を撤去するためには、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。
既存の機械式駐車場の駐車可能台数、面積、マンションの立地などによって、撤去費用は大きく変動します。
施工例をいくつかご紹介しましょう。
機械式駐車場のタイプ | 撤去費用相場 |
①二段方式 8台分 | 150万円~250万円 |
②二段方式 24台分 | 250万円~350万円 |
③多段方式 32台分 | 860万円~1200万円 |
業者によって見積もり額は大きく異なる傾向があるようです。例えば②の場合、570万円以上の見積もりを出した業者もあったようです。
では、業者によって見積もりに大きな差が出る要因とは何でしょうか?
小回りの利く重機を所持しているか否か
例えば、マンション周辺の道路が狭く大型重機が入らない場合、小回りの利く重機を持っていない業者であれば、追加費用が発生します。
工期の見積が短いか長いか
熟練の職人さんが多い業者であれば、工期もその分短くなります。工期が長くなればその分人件費などもかさむため、見積もりは高額になります。
廃材の買い取り価格が高いか安いか
解体によって出るスクラップのうち、鉄骨などの金属はリサイクルされます。
その分を工事の見積もりから差し引くのですが、こちらの額も業者によって差が出ます。
見積もりでも、単なる値引きと表記する業者もあれば、買取費用と明記する業者もあります。
このような要因によって、見積もりによっては倍近い差が出るケースもあります。
機械式駐車場を撤去する工事方法
機械式駐車場を撤去した後、その場所を平面化するのですが、その工法は主に2つです。
①鋼製平面工法
機械式駐車場解体後の地下ピットの空間に支えを組み立てて、その上に鋼製の板を乗せて蓋をするような形で平面化する工法です。
使用する材料は比較的軽量であるため、施工が終わった後、周辺地盤への影響があまり発生しません。
また、工期が埋戻しより短いというメリットがあります。
一方、デメリットは費用はやや高額になることです。更に、鋼製の板はスリップしやすいという問題点があります。
②埋戻し工法
解体後の地下ピットに土砂+アスファルトやコンクリートを入れて埋める工法です。
比較的安価で工事が出来るため、予算があまりとれない場合はこちらを選択することが多く、スタンダードな方法です。
ただし、使用する土砂の重みによって、周辺地盤にひび割れなどの悪影響を及ぼす可能性があるというデメリットもあります。
機械式駐車場の維持管理費用は大きな負担となる
このページをご覧の方は既に、機械式駐車場にデメリットを感じている方が多いと思いますが、改めてまとめたいと思います。
利用率の低下が管理費の増額要因に
多くの機械式駐車場はマンションの居住者がガソリン車を保有しているということが前提の時代に作られており、如何に小さなスペースで多くの車を駐車させるかというという点が重要視されてきました。
しかし、現在は
- 住民の高齢化による免許の返納、公共交通機関の利用
- 車を所有しない世帯の増加(若者世代の車離れ)
という社会状況の変化が猛スピードで進んでおり、車を持っている世帯でも、ミニバンやRVなどの車高が高い車種を購入するファミリー層が多く、機械式駐車場では入庫できないというケースも少なくありません。
さらに、近年車のEV化も進んでいますが、自宅駐車場で充電がやできないとなるとやや不便です。
マンション自体の老朽化により、入居者が減少しているマンションも見受けられるようになってきました。
このように多くのマンションにて機械式駐車場の利用率が低下する状況が生まれています。
いくらスペースの利用効率に優れているからと言って、誰も使用しないのであれば全く存在意義がありません。
そして、利用率が低いと言うことは、利用収入もないということですから、最終的には管理費の増額としてマンション住人に負担のしわ寄せがいくことになります。
結果として、高額な管理費を避けようとする心理が働いてマンション自体の入居者が減り、住民の修繕費徴収が増え、さらに入居者が減るという負の連鎖が続いてしまいます。
消耗品交換費など維持費用が高額
機械式駐車場には消耗品があり、5~10年周期で交換が必要となります。
そのため、機械の更新が必要となるのですが、これが実に高額で、1パレット100万円程度が相場となります。
管理組合様としては非常に大きな負担となっています。
このようなそもそも利用率が少ないものについて、高額な更新費用を払い維持していくことに意味があるのでしょうか。
機械式駐車場を撤去してしまえば、平面駐車場や駐輪場、災害用の備蓄倉庫などに活用することができます。
入居者や社会状況の変化に合わせて、機械式駐車場自体を見直す状況になっているのではないでしょうか。
まとめ
まとめます。
- 機械式駐車場の撤去費用は、業者によって大きな差が出る
- 生活スタイルの変化に伴い、機械式駐車場を撤去するマンションが増加している
機械式駐車場は、利用者が減ったとしてもメンテナンス費用は減りません。利用者が減っているのであれば、土地の違う活用方法を考えることは合理的です。
ただし、撤去を進めるためには、マンションの総会決議が必要になります。
さらに現在駐車場を利用している住民の承諾、工事中の駐車場所の確保なども必要であることを認識しておきましょう。
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